逮捕時に家から持ち出すべき品々 その2 | 全然パラダイス

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いつか来た道

留置場の空調管理はシャバに準ずる高水準。

署長が真夏に見廻りに来て、「オレの部屋(署長室)より冷えてるやんけ」

なんてこぼす位、オレたちを大切に閉じ込めてくれる。


もちろん、地方の古い留置だとまた違ってくるかもしれないが、拘禁施設御三家 留置・未決・刑務所の中で一番空調が整っているのは、留置場だ。

その次は、(近年に建設された)未決であろう。

立川拘置所はここ数年来で完成した新しい建物だが、私が居た当時の夏場の空調は恐ろしいくらい冷えていた。

東拘でも空調はあるが、あくまで廊下がメインである。担当台の真上だったりしてさ。

昔の大拘に空調なんて存在しなかったなあ、時代が変われば懲役もその恩恵を得るんだねえ、世間様には申し訳ないが。


まず東拘では、舎房担当のオヤジ様が冷やされる(設定温度28℃)

その崇高な身体に充分浸透したのち、ほどよくヌルくなった微風で、舎房の雑役が湿り気の恩恵を得る
(既に冷たくはない)

いよいよということで、食器口やブラインド状のサッシの隙間、はたまた数ミリの穴から我々の部屋に入り込むか込まないか、いや絶対に入ってこないやん構造上、という流れで未決、または垢落ちした確定囚におこぼれの空調が届く。

いや、ぢぇんぢぇん届いていませんが。


刑務所だってPFIにでも行けば、また違ってきそうだが…あんな官民共同の刑務所なんてなにが面白いンだか、呼ばれても絶対に行かんわ。

まあ、呼ばれないし呼ぶ気もないだろうし、私に行ける資格もないし、あれやしこれやし、ごめんなさい。 ホンマ、すいません。


立拘は独居内の天井に送風口があり、そこから冷風が吹き出していた。

出来たばかりで収容人数も少なかったからなのか、その時期が猛暑で熱中症が問題とされていたからなのか定かではないが、未決であのような冷房に遭遇するのは始めての経験だったので感動した記憶がある。

先進国万歳!寒すぎて長袖を着ていたくらいだからね。


普段の外出するような服装でも問題はないが、留置も未決も生活の大半は屋内でダラダラする毎日が日曜日。

留置場から外に出る機会は、検事調べや裁判所へ行く際の移動で車に乗り込む時に少しと、あとは取り調べ段階で引き当たりがある時くらいだろう。

医療上の理由でシャバの病院に行くこともあるかもしれないが、それだって部屋着で充分である。


引き当たりは、実況検分をすることだ。

君が事件を起こした犯行現場に刑事と一緒に赴くのだが、それも車内から確認するだけで済んだり、車外に出ても写真撮影をしてすぐに終わることがほとんど。

地図上と刑事が撮影した写真を見て確認し、現場には行かないこともある。

何かを埋めたり、あちこち壊したり、全国各地で悪行を繰り返したりしていなければ、引き当たりだって部屋着で充分、真冬ならさらに上着が一枚用意できればそれでOKだ。

夕方のニュースに映るのであれば、それなりにドレスアップも必要だが。


集団で窃盗行脚をしていたコロンビア人が、東京の留置から大阪まで引き当たりされたコトがあった。

普通の引き当たり感覚からすれば、かなりぶっ飛んだ話である。

そしたら管理係の人間が揉めだしちゃってさ。

被疑者の護送は管理の仕事だから、俺たちが大阪までコロンビア人を連れて行くンやで!もちろん泊まりで領収書は桜田門でな!

なんつって張り切っちゃってさ。


普段は檻の中で狂った犯罪者相手にしてるンだもん、息抜きも必要だよネ。

じゃあ誰が行くんだって、お互いに譲らないンだよなー おまわりさん同士なのにさ。

管理の人間って、若手は刑事に上がる前の有望な警察官が短期で務めてるンだよね。

でもさ、中年になって管理務めてるおまわりさんってさ、何か…はっきりとは言いたくないけれど、独特なんだよね。例えるなら…


戦場に出たら味方撃っちゃうタイプ


なんだよなー、わかるかなー。

いや、懲役が言うな!と思うかもしれませんが、私たちから見てもさ、なんとも言えん雰囲気のおまわりさんが実際居るのよネ。

これはあくまで私の実体験なんだけどさ、露骨に賄賂を求める人間が1人居ましたがな。

投資に嵌っている人だったから、お金に困っていたんだろうなあ。何でもする!っつってさ。

あと、仕事を紹介して欲しい…と、相談してくるタイプ。副業じゃなく転職考えてた…

若手の人だったけれど、その人も相当お金に困ってたと記憶する。

一番困ったのが、ホモ(はっきりいいます)の方。

ボディタッチがハンパないから、アニキったら!

手錠やら縄やらが日常にある密室が、彼をそうさせてしまったのかしら…


入浴中もさ、ある程度は監視が付くンだけれど(まったく見ないトコもある)、もう唇の端にツバキを溜めながら、舐めるように観てくるもんね。

運動の時も、いつも隣に座って俺のひざ頭を撫でてくるしさ…

同僚もそういう彼の性癖をもちろん知っているけど、役職なんで見て見ぬフリなんだよなあ。

面倒見のイイ人だったけれど、もうちょっと隠して欲しかったよなあ、腰縄を縛る時も手つきがエロいんだ、無駄に上手いしさ。




さて、話がだいぶソレたが、ここまで全部まえおきである。 無駄に長いネ!



逮捕された時にどんな衣類を持ち出せばいいか?



● ユニクロなどの安くて普段使いの部屋着で充分 スウェット・ジャージ推奨 ●


まず、普段の部屋着で充分ということ。

その季節に合わせて部屋で着ていた君のコスチュームを用意しよう。

シャカシャカしてる、スポーティーなやつもイイね。ウィンドブレーカーか。

加えて、Tシャツ等のインナーだ。冬なら長袖だね。

そして、下着に靴下。 

靴は、ヒモで結ばないモノを。

ひも靴はヒモを外し、短い紙ひもで最低限の穴だけを通した状態で履かされるか、諦めろ!と言われる場合があるので注意だ。


以上。

まあ、当たり前ですよね。何か特別な変化球があるとか? 

ちょっとだけ気をつけることはある。



● 衣類は汚れたり破れたりしても惜しくないものを選ぶ ●


見栄を張ってオシャレな服を差し入れしてもらう奴もいるが、何の実用性もないヨ。

せめて公判で着るくらいでしょうか。 それだって逮捕されてから、ひと月以上は先の話。

もちろん不良はココでも見栄を張って頑張っちゃうが、生暖かい目で見守るのが正解。

マネはするな! 初犯は目立とうとするな! 金があるとわかれば、アリの如く群がってくる。


衣類の洗濯は留置も未決も昔は手洗いで自分でやったけれど、今は留置だと洗濯機があるだろうし、署によっては乾燥機付きで干す作業すらしなくていい。

未決だって洗濯工場がしてくれるが、シャツや下着、靴下だけ無料でという形がほとんどだろう。

その他は有料の扱いになるか、自分でしろと言われるか、洗濯はシャバにお願いしろ…というパターンだろう。

留置では特におまわりさんが豪快に洗濯機回すし、未決でも機械で大量に洗うから、洗濯中に破れることを考えて、高いモノは避けるべきだ。

注意することは他にもある。




● 選ぶ衣類にヒモや金具、フードは付いていないか? ●


たとえばデニムに金具が付いていたり(装飾された実用性のないボタン等)、上着にフードがあったり、腰や裾の部分にサイズを調整するヒモ状のものやゴムひもが入っていたりすると、取り外したり切らなければ使えない。

特にパーカーなどのフードはNGになるから注意だ。

これは留置でも未決でも同じ。

いくら派手であってもいいが、ひも状のモノ、フード類、装飾品等の付属物にはうるさいので気をつけて欲しい。




● 衣類等の私物には必ず数量・容量の制限があるが、それは未決に行ってから ●


留置に居る分は、あまり気にしなくていいが、流石にそれだって限度はある。

留置によって違いはあるが、洗濯は週に1回、入浴は週2回と考えて着替えを準備するといい。

これ以上の待遇もあるのかもしれんが、私は巡り合ったことはない。逆にコレ以下は存在する。

風呂が5日おき、なんて留置もあったが…そこが特殊だっただけ、というコトもあるからね。

とりあえず、留置をめどに衣類を準備して、留置で過ごしながら未決での生活準備を整えることもできる。

その方が同房の人間に最新の未決情報を得られるので、あれこれ不安することも少ないはずだ。

しかし、シャバに手助けしてくれる人間がいれば…である。

今後の差し入れが期待できないのであれば、自宅にいる今のうちに一気に準備をしたほうがいい。


私服は留置・未決まで着ることができる。刑務所に持って行けば出所時に着れる。

未決で刑が確定しても、垢落ちして確定房へと転房するまで着続けられる。

刑務所まで使えるものもあるが、ここは分けて考えた方がいい。




● 留置と未決で生活する際に使う衣類

● 出廷時に着る服

● 未決から刑務所(分類センター)に移送される際に着る服

● 刑務所で使う衣類


という具合だ。



裁判で着る衣類は、背広が本当に良いのか? 私は非常に疑問を持っている。

日本の裁判は、自由心証主義だ。だから裁判官の心証を損ねないように~

なんて懲役はよく考える。

その表れが、頭を坊主にしたり、公判で背広を着て身なりを整えたりする行動だ。

弁ちゃんにもそれをススめる人もいるが、ゼロとは言わないがそれほど関係なくね?的な、粋な弁護士もいたんだよね。


実際、判決には影響しないと思うのが私の勝手な妄想。

だから、前刑の時は Tシャツデニムで公判に立ったんだけど…
(他に数回はジャージで行きました、すんません)

胸に 「F B I」とプリントされたTシャツで出廷してみたりしたンだよね。

周りはスベったみたいな雰囲気になったけどさ、結果…予想通りの判決だったから、やっぱ服装はラフでもいいんじゃない?というのがオレの見解かなあ。


不良は背広着てビシっとキメるけど、それ喪服だよネって奴も見つけちゃう悲しさ。

みんな被害者のコトは忘れて必死に生きているンやなあ、懲役って最低だね。

お前もな! ありがとうございます、仰るとおりでごぜえます。




● 刑務所で使える衣類 ●


自宅で使っていたものや、差し入れされた市販品を刑務所で使うには高いハードルがある。

不正な物品の流入を防ぐ目的もあるが、受刑者同士の生活環境に著しい差が生まれるのを官が嫌うからだ。

だから、特定の差し入れ業者から購入した物品(売っている商品は市販品と同等だが、刑務所が指定した業者が取り扱っているものを購入しました私、というくだりが重要)しか差し入れを受け付けなかったり、君の愛用品やシャバの人間が買った市販品でも、派手であったりブランド物で高価なものは受け入れてもらえない。


しかし、留置や未決では刑が確定していない分、ある程度は自由が保証されている。

でもさ、留置も未決も刑務所も同じ拘禁施設、国の管理する刑事施設に変わりはないよね。

だから、留置や未決で使えたものが刑務所で使えないのはおかしいじゃないか、というヤカラもいるので、特に未決で使っていたもの、なかでも未決の差し入れ業者が扱っていた物品に限り、刑務所でも使ってもいい場合がありますよー、という暗黙のルールがある。


たとえば、福岡拘置所が指定した差し入れ業者で買った下着や日用品があるとしよう。

これは北海道の刑務所へ行っても使える可能性が高い(絶対ではないが、まず使える)

だからといって、福岡から毎月それらを補充して送ってもらい使い続けるのは無理だ。

刑務所に移送された際に、君が持ち込んだ分だけが使い切るまで使用可能なのだ。


懲役太郎はこの裏メニューをよく知っているので、みんな未決でお気に入りのタオルや石ケン、シャンプーや下着、なかにはサンダルや運動靴まで買って、刑務所に備えるやつもいる。

なぜか?

刑務所で購入できる物品は、未決の差し入れ業者の取り扱い品に比べると、品質やデザインが非常に劣る!ことがあるからだ。

その逆も勿論ある、しかし刑務所で買うものは皆がみんな買うものなので、例え色違いであっても同じメーカー同じ形状で、まったくもって面白みがない…と、あほな懲役はみんな考える。

だから、ちょっと珍しいものを持っていると、うれP-のである。マンモスうれPのである。

それがもとでケンカになっちゃうコトもあるが、それも懲役の醍醐味だから気にしない。


まあ、オレもしっかり買うタイプですが!

特にサンダルとタオル、シャンプーに石ケン、石ケン箱は値打ちがあるからね、つっても懲役にしか通じないか(笑)

そうするとさ、ムショで珍しいシャンプー持ってる奴に会ったりするんだよね。

ツバキとかさ赤いボトルで目立っちゃってさ。こっちはシャワランだっつーの、便所の洗剤と見まごうデザイン。


「えー?ラックスなんて持ってんの?ドコそれ?」 「いやあー水戸(の未決)なんだけど♪」

「じゃあ次は水戸にいこっかなー」 「甘シャリもいいの売ってるよ」「えっ マジで?ホワイトチョコ売ってンの?」


なんて会話が弾んじゃってさ、どっちも頭は丸坊主で髪の毛ミリ単位だってのに。
(水戸でホワイトチョコ売ってるかは知りません、例えばの話ネ)

そして、担当に見つかり全裸で叱責される…と。不正交談、懲役乙。

まあ、見つかるやつはビギナーだけどな!

どーでもいいですよね、調子ノリました すんませんー



話を戻そう。


● 冬の寒さ対策は未決に行った時に必要になる 刑務所は身を任せろ ●


暑さは薄着でどうにでもなるが、寒さにはある程度の準備が必要になる。

留置までは寒さに震えることもないが、冬の未決はインナーをしっかりと用意しておきたい。

スパッツのようなゴムが織り込まれたパッチ(レギンスつーの?)も、思いっきり自殺のアイテムになりそうだけれど、未決までなら平気なはず。

めっちゃ伸びますドコまでも!なんてゴムメインのブツはNGだけれど、多少織り込まれている分には問題ないと判断されたよ、東拘だけどさ。

気になるなら伸縮性は犠牲にして、普通のメリヤス上下にするのが無難。施設内にある差し入れ屋から買うのが確実だ。


暖かいダウンジャケットやベンチコート類もあれば嬉しい。

未決には冬用に半てんを販売してるところもあるので、それを頼ってもいい。

靴下に関しては、水虫持ちなら必ず履こう。集団生活ではトラブルになる。

手袋やマスク、帽子類にマフラーの持ち込みは無理だ。

未決で手袋を購入することも出来るが冬季限定だし、運動以外に手袋なんて使わんし、使う機会は少ない。


ただし未決も地域によってはとんでもない寒さのところがあるので、この限りではない。

盆地はホント辛い。夏は暑いし冬は寒いし…北海道は逆に平気。施設がしっかりと対応してる。

冬にパクられたら、留置の間は大丈夫だが未決に行く際は防寒対策は必須、気をつけて欲しい。




● 番外 君は「トメ」マークを知っているか ●


被疑者が地検に連行される際に、留置から出てくる際の映像を見ることがあるだろう。

大抵、スウェット姿でサンダル履きなのだが、胸や背中に黒マジックで


「 トメ 」  もしくは 「 留 」

と書かれているのを見たことは無いだろうか。


トメブランド…知っている人間は決して着たくはない一品である。

留置に入る人間は、色々な犯罪に染まった方がいるので、中には血化粧で自分を染めちゃったり、スカトロちっくだったり、何週間も同じ服装だったりする場合がある。

留置内は集団生活になるので、そんな奴が入ってくれば必ずトラブルになる。

例え独居に入ったとしても…そのままの服装では部屋を汚すことになりかねない。

だから、新入風呂というものもあって、新入は入浴日に関係なく留置にきたら必ず風呂に入れられるのだ。


でもパクられてホヤホヤだから、アタシ着替えなんて持ってないお。

そこで、トメブランド発動である。


留置には余分な衣類がストックされていて、それには全て「トメ・留」の烙印が押されているのが普通だ。

トメスウェット、トメTシャツ、トメくつ下にトメパンツ…全部中古です。

誰が使ったかしらない、知られちゃけいないトメ衣装で全国のお茶の間に登場。

トメ = ヨゴレ そんなイメージがあるのは事情を知っている関係者だけである。

お前ら懲役全員ヨゴレだけどな! はいはい、仰るとおりでございます。



さて。

次回は持ち出すべき日用品とか細々したモノでも書きますか、まあ種類は少ないけれど。