楽しい留置場生活 3 | 全然パラダイス

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いつか来た道

警察署の前を通ると、つい建物を見上げてしまう。ここの留置は何階かなあ、なんつってさ。

 

さて。

懲役女子と文通したい!

そんなコトしている場合ではないのに。

 

これは現実逃避である。

目の前1cmにある重責から目を背けるための。

なんてったって犯罪者、逃げるのは好きなの。

すぐ捕まるけどな!

 

懲役女子に手紙を送るには、フルネームが必要だ。住所は留置されている警察署。もしくは未決。これはすぐにわかる。大切なのは名前。

 

さて、どうやって調べればいいのか。

それは、地検に行くとき、地検に着いた後。

ここが重要なのだ。

 

被疑者は必ず地検に行く。何度も。この時を見逃してはいけない。

人生の大切なものをすべて見逃しても、絶対に見逃せないものが懲役にはある。

 

留置から地検に送られるときは、バスが迎えに来る。その地域の警察署を巡回して他の被疑者を拾い、最終的に地検に行く。

帰りはその逆で。

 

各地から選び抜かれた精鋭たちが、ぞくぞくとバスに乗り込んでくる。いつだって押送は犯罪者で大賑わい。

車内は交談禁止
だからどうした、こっちは懲役なんですから。

 

むやみにルールは破らないが、そうする必要がある場合は躊躇せずに破る。

そんな心理に、心当たりがある人もいるだろう。


車内で情報収集を開始。

集める情報は懲役女子の名前、じつにスケールが小さい話である。

 

せこい!ほんと書いていて悲しくなる。でもこれは、昔に実際やっていたことなのだ。人間追い詰められると、何をするか分からないものである。

 

隣に、または近くに座ってる人の良さそうな犯罪者に,刑事よろしく聞き込みをする。

 

乗り込んできた犯罪者が、どこの署かは一目瞭然。住所はOK,あとは名前さえ分かれば。

 

「そっち何人位います?うち20人超えましたよ~」

「今回長くなりそうですか?」「自弁いいです?うちはひどいよ~」

 

このような世間話で探りをいれる。話しかけても無視するやつは多い、それが普通だよね。

しかし懲役の悲しい性、アゴが好きなやつは必ずいるのだ。

 

「うち(の留置)、女いますけど、そっちどうです?」

「いない?おたくどうです?」

 

なんて聞きまわるわけ。もちろん車内にはおまわりさんがいるが、今更なにを言われたってこっちは懲役確定の身である。

 

懲役をこじらせた懲役は、バスに乗ったらワンマンなのだ。おまわりさん、ごめんなさい。

 

 

「いる?名前わかります?」

「えっ?あいぞめ きょうこ?」

「それアンタの趣味やろ!このエロがっぱ!」


なんつってさ。もうアホだよなあ。
大抵、冗談話で終わる。たとえ女性が居ても、名前まで把握していないことが多い。

 

しかし!ここで諦めてはいけない。

地検に着いてからでもチャンスはあるのだ。
 

その話はまた次回に。

人生のチャンスは見逃してきたくせに?

 

仰る通りでございます。

見逃し三振アウトのオレを、おまわりさんは見逃してくれない。

いつだって、ピンチはピンチ。