警察署の前を通ると、つい建物を見上げてしまう。ここの留置は何階かなあ、なんつってさ。
さて。
懲役女子と文通したい!
そんなコトしている場合ではないのに。
これは現実逃避である。
目の前1cmにある重責から目を背けるための。
なんてったって犯罪者、逃げるのは好きなの。
すぐ捕まるけどな!
懲役女子に手紙を送るには、フルネームが必要だ。住所は留置されている警察署。もしくは未決。これはすぐにわかる。大切なのは名前。
さて、どうやって調べればいいのか。
それは、地検に行くとき、地検に着いた後。
ここが重要なのだ。
被疑者は必ず地検に行く。何度も。この時を見逃してはいけない。
人生の大切なものをすべて見逃しても、絶対に見逃せないものが懲役にはある。
留置から地検に送られるときは、バスが迎えに来る。その地域の警察署を巡回して他の被疑者を拾い、最終的に地検に行く。
帰りはその逆で。
各地から選び抜かれた精鋭たちが、ぞくぞくとバスに乗り込んでくる。いつだって押送は犯罪者で大賑わい。
車内は交談禁止
だからどうした、こっちは懲役なんですから。
むやみにルールは破らないが、そうする必要がある場合は躊躇せずに破る。
そんな心理に、心当たりがある人もいるだろう。
車内で情報収集を開始。
集める情報は懲役女子の名前、じつにスケールが小さい話である。
せこい!ほんと書いていて悲しくなる。でもこれは、昔に実際やっていたことなのだ。人間追い詰められると、何をするか分からないものである。
隣に、または近くに座ってる人の良さそうな犯罪者に,刑事よろしく聞き込みをする。
乗り込んできた犯罪者が、どこの署かは一目瞭然。住所はOK,あとは名前さえ分かれば。
「そっち何人位います?うち20人超えましたよ~」
「今回長くなりそうですか?」「自弁いいです?うちはひどいよ~」
このような世間話で探りをいれる。話しかけても無視するやつは多い、それが普通だよね。
しかし懲役の悲しい性、アゴが好きなやつは必ずいるのだ。
「うち(の留置)、女いますけど、そっちどうです?」
「いない?おたくどうです?」
なんて聞きまわるわけ。もちろん車内にはおまわりさんがいるが、今更なにを言われたってこっちは懲役確定の身である。
懲役をこじらせた懲役は、バスに乗ったらワンマンなのだ。おまわりさん、ごめんなさい。
「いる?名前わかります?」
「えっ?あいぞめ きょうこ?」
「それアンタの趣味やろ!このエロがっぱ!」
なんつってさ。もうアホだよなあ。
大抵、冗談話で終わる。たとえ女性が居ても、名前まで把握していないことが多い。
しかし!ここで諦めてはいけない。
地検に着いてからでもチャンスはあるのだ。
その話はまた次回に。
人生のチャンスは見逃してきたくせに?
仰る通りでございます。
見逃し三振アウトのオレを、おまわりさんは見逃してくれない。
いつだって、ピンチはピンチ。